富士市立田子浦幼稚園のSDGs 2020年12月7日OA

 

園長 大石久美子さん

田子浦幼稚園のご紹介をお願いします

場所は富士南イオンの近くで、田子浦小学校と田子浦まちづくりセンターに挟まれています。園庭が広く、大きなプールがあり、鉄筋2階建ての大きな幼稚園です。

園目標は「あかるく やさしく たくましく」で、自分らしさをもち、心身ともに健康でたくましく、優しい子の育成を目指しています。「遊びは学び」を合言葉に、遊びなどの体験の中で、教育的瞬間を見逃さず、適切な援助を心掛けています。

創立は昭和28年で、新幹線新富士駅設置に伴い、昭和61年に今の場所に移転しました。現在の園児数は、年少に37人の2クラス、年中37人の2クラス、年長33人の2クラス、合計107人の6クラスです。そして、ことばの教室が2クラスあります。職員は16人います。

持続可能な未来づくりに貢献する「実践例」を教えてください

11月14日に、「全国幼児教育ESDフォーラム」で、田子浦幼稚園の「紙のまちにある幼稚園として未来につなげていくもの」として、紙資源を豊富に使った保育を紹介しました。内容は、教師の教材研究や作品展示の工夫、ゴミの分別、リサイクルの活動を発表しました。また、同じ分科会で、富士市の春日製紙さんの「紙ストロー」の取り組みや 富士市CNF普及推進員さんの話もお聞きしました。

それらの活動は、SDGsの目標の中の該当するとお考えですか?

幼稚園の教育は、たくさんの項目に関連していることが多いです。今回は、「4の質の高い教育をみんなに」に視点を当てました。

紙の幼稚園に取り組もうと思ったきっかけは?

静岡大学の田宮教授が園訪問してくださったとき、紙に資源に恵まれている本園の特徴を価値づけしてくれました。それまで、地元の業者様から規格外になった紙等をいただき、保育に利用してきましたが、当たり前のこととして受け止めていました。しかしそのことは、地域産業とのつながりや紙資源が豊かだからできる保育だと気づかされました。その地域産業である「紙」を通し、「質の高い教育を考えていこう」と取り組みました。昨年の夏から取り組みをはじめています。

園ではどのような活動を行っていますか?

年少は、体を使って「紙」と遊ぶ体験をたくさんしました。新聞紙をちぎったり、丸めたり、また大きなクラフト紙にのったり、体に巻き付けたり・・外ではクラフト紙に水を流したり、泥で汚したりと、「紙」と遊びました。

年中は、色々な種類の紙があるとこに気付けるよう教師が、製作に合わせて、いろいろな素材の紙を用意し、たくさん繰り返して遊ぶ経験をしました。

年長は、自分が作りたいものにあった素材の紙を自分で選び、作り上げる遊びをしてきました。

その為、色や質の違う紙をたくさん用意してみました。はじめは、子どもたちは、目の前にある素材をどのように使ったらいいのか迷っていましたが、教師が一緒に材料を探し、イメージに近づくように選び取るきっかけを作っていきました。すると、お店屋さんごっこで「ポテトを作りたい」という子どもが、紙を手に取りながら「これは硬くて丸められない紙だ」と紙質に気付き、色も見ながら「これはあげすぎのポテトだ」とか「白いのは柔らかいポテトにしよう」などと様々な種類のポテトを作り始めました。その後、イメージが膨らみ、ポップコーンづくりに発展しました。また、「友達とイメージを共有して協力してつくりあげる楽しさ」を体験してきました。

教諭や子どもたちからはどのような声が聞かれましたか?

教師は今まで以上に、教材研究をするようになりました。子どもに気付かせる、子ども自身が考え選ぶようにするにはと、教師自身も考えるようになりました。子どもたちも、自分で選び、考える遊びを行うようになってきました。こうした教師も、子どもも考え、探求することが「質の高い教育」になることがわかってきました。

「質の高い教育」というと、「文字が書けて、読めて、数字が理解できて・・・とか、跳び箱が何段跳べて、スイミングが得意になるとか・・・」を想像すると思いますが、田子浦幼稚園の考える「質の高い教育と」は、SDGsの考えの持続可能な開発のために必要な、ESD(持続可能な社会の作り手の育成・持続可能は開発のための教育)につながる教育のことです。

「リサイクル研究」にも発展させているそうですね

年長児が、各クラスを回り、紙ごみとプラスチックごみを回収しています。回収する人がいてゴミがきれいになること、そのごみが工場に持っていくとリサイクルされることを実際に自分たちが経験することで、意識が高まってきました。「紙すき」を紙のリサイクルの仕組みと同じととらえ、体験をさせたいと考えました。「紙すき」体験は静大の田宮教授からもぜひ体験させてほしいとアドバイスがあった活動です。

幼児に、「紙のまち富士市が、リサイクル紙を生産していて、それが地球にやさしくて…」という話は難しいところがあります。が、この体験が、小中学校の総合学習につながり、社会人になった時、幼稚園で体験したことが、「富士市って紙のまちなんだ」と地域の産業に興味を持ってくれたらと思っています。

また、リサイクルは、地球にやさしい活動だったと気づいてくれるきっかけになってくれたらと思っています。

園長先生の思いをお聞かせください

「紙」と地域産業のつながりを、保育に取り入れた実践例をお話してきましたが、なぜ、これが「質の高い教育をみんなに」につながるかというと、「紙」ととおして、いろんな遊びをしたことで、自分がイメージしたものに合わせて、紙素材を選ぶ力が育ってきました。また考える力も育ってきました。そのことが「質の高い教育をみんなに」になると思っています。もちろん、製作遊びだけではなく、色々な活動で子どもも教師も「考える力」が育ってきたと感じています。

園だよりやHPで、SDGsの取り組みや幼児教育フォーラムで発表したことを発信してきました。SDGsって何だろうと思っている保護者の方も少しずつその言葉に耳慣れしてきていると思います。意味も少しずつ理解してきてくれていると思っています。

園での教育を通じ、どのような未来を作りたいとお考えでしょうか

自分で考え、選び取る力を育んだ子どもたちが社会人になったら、「単価が高い紙のストロー」と「単価の安いプラスチックのストロー」では、どちらが持続可能な社会につながるかわかると思います。トイレットペーパーでも同じです。単価が少し高い再生紙の物とそうでない安い物と、その違いに思いをはせることができるはずです。持続可能な社会につながるものを選び使う人達が増え、地域の産業が発展していく・・・そういう未来を願っています。

(インタビュー 2020年12月7日)

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