エフピー化成工業株式会社のSDGs 2021年9月13日OA
エフピー化成工業株式会社 管理部 望月彩実さん
会社のプロフィールをお願いします
エフピー化成工業は平成28年8月創立のまだ新しい会社です。合成樹脂の製造や押出成形品、射出成型品の販売等を行っています。
持続可能な未来づくりに貢献する「事業内容」を教えてください。
独自のリサイクル技術で、紙と樹脂を混合したハイブリッド樹脂「FPC」や、セルロースファイバーと樹脂を混合した環境配慮型複合樹脂「グリーンチップ®CMF®」開発、製造を行っています。「FPC」は、コストや手間の問題から、リサイクルが困難で産業廃棄物扱いされる事が多かった「難古紙」や処理に困っている「産廃樹脂」を主な材料として使っています。これらは大半、発生先が処理費を払い、固形燃料(RPF)として再生されるか、埋め立て処理をされていました。弊社独自の紙と樹脂を混合する技術でこれら廃材を再利用し、単なるリサイクル素材ではなく、優れた特徴をもつ新たなハイブリッド樹脂(FPC)として再生する事が可能となります。そしてこの素材は何度でも繰り返し再生可能な樹脂になります。
FPCはどのようなものに使われていますか
弊社は材料メーカーとして環境配慮型樹脂の製造を行っていますが、同時に成形も行っています。主な製品としてはデッキ材です。紙繊維を混ぜることにより、プラスチックのみでは出すことのできなかった“より自然な風合い”のあるデッキ材に仕上がります。木のデッキ材と比べると耐性が強く、アフターメンテナンスの必要性がない為、富士市内の温泉施設や、幼稚園などでご使用いただいております。また、弊社のFPCを使ったフラワーポットも販売されています。紙繊維を混ぜている為、自然な風合いであり、触れたときにも見た目にも柔かさがあるのが好評です。
どのような特長がありますか?
紙繊維が入っている事により、樹脂単体に比べて寸法変化が少なく、非帯電性能にも優れています。環境変化に強く、耐摩耗性もあり、廃材を再利用するからこそリーズナブル、何度もリサイクルできるエコ素材です。
SDGsには17の目標がありますが、事業はどれに該当するとお考えでしょうか。
12 つくる責任 つかう責任 13 気候変動に具体的な対策を 14 海の豊かさを守ろう です。
去年7月に共同開発したという、「セルロースファイバー高配合 環境にやさしいグリーンチップ®CMF®」について、詳しく教えてください。
ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂に天然素材であるセルロースファイバーを配合した複合樹脂です。セルロースナノファイバー(CNF)は国家プロジェクトにもなっており、耳にしたことがある方もいるかと思います。セルロースナノファイバーは、「植物由来の素材で鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度」等の特性を有します。政府はこれを樹脂材料と混合し使用することで、製品の軽量化や化石由来削減につなげCo2の効果的な削減を図る事を目的とし、推進しています。しかしセルロースナノファイバーはナノレベルの微細な繊維のため、解繊するのに莫大なエネルギーとコストがかかり、市場に普及し辛い現状があります。弊社が開発した特殊混錬製法は、エネルギーやコストを抑え、繊維を解繊し、均一に分散させることが出来るため、既存の製法と比較し、省エネルギーかつ安価で供給する事が可能です。
どのような特長がありますか。
お客様のニーズに合わせた配合や流動特性の調整が可能です。セルロースファイバーを高配合すると、流動性が悪くなり成形することが難しいといわれています。しかし独自の混錬技術により、成形するための流動性調整が可能となりました。これにより肉厚から肉薄まで様々な分野での成形が可能。セルロースファイバーを51パーセント以上高配合することで、紙ごみとして分類することができ、石油由来樹脂の使用量の削減、また肉薄化による軽量化によりCO2削減にも貢献する環境関連を中心としたSDGsに対応する環境に優しい製品です。
実際に、どのような場面で使うことが出来ますか。
GREEN CHIP CMFを素材とした製品で今、普及しているのは金融機関で使われているコイントレー(カルトン)です。金融機関はSDGsに対する意識が高く、GREEN CHIP CMFの初の製品化に多大なご協力をいただきました。おかげさまで、他の金融機関や商店様からもお問合せを頂き、バイオマスプラスチック(環境配慮型樹脂)がじわじわとひろがってきていると感じます。
開発のきっかけは
弊社社長は、約30年富士市の紙加工会社に勤めており、難古紙のリサイクルができないかと長年に渡って研究開発を続けてきました。樹脂と難古紙の混合技術に成功し、そして“環境を考える会社を創りたい”とエフピー化成工業を立ち上げました。難古紙のリサイクル技術の確立と同時期、海洋問題や環境問題が声高に叫ばれるようになり、少しでもプラスチックの利便性を失わずプラスチックを削減し、環境に配慮したものが作れないかと考えたのがGREEN CHIP CMFの開発のきっかけです。
開発はどのように進めてこられましたか。
開発は、会社設立当初から始まりました。当時セルロースナノファイバー案件は国家プロジェクトとして始まったばかりで、何の指標もなくすべてが手探りでした。セルロースナノファイバーは細かな繊維であるため、樹脂と混合するには相当な技術が必要になります。より細かな繊維は凝集しやすく、凝集すると物性も下がってしまいます。富士市工業技術センター様や県の工業技術センター様にご協力頂き、製造した樹脂のX線CT画像解析や耐性などを何度も確認しに行きました。その度に様々な問題点があり、共同開発の㈱巴川製紙所様と打ち合わせを行い、試行錯誤を繰り返してきました。混合条件など、本当に何千通りと試しました。3年たってようやく繊維の高分散技術に成功し、物性もプラスチック単体以上の安定した結果が得られた時は、やっと世の中に自信をもって“環境配慮型樹脂”を製造していると言えるようになりました。
今後は、どのような展開を考えていますか
セルロースファイバー入り樹脂は、流動性が調整できるので様々な分野での期待が持てます。政府がすすめている「脱プラスチック(カトラリー関係の有料化)」も、弊社のGREEN CHIP CMFを使えばプラスチックの利便性をのこしたまま、可燃ごみとしての取り扱いが可能となります。更にGREEN CHIP CMFは再生劣化が少ない為、リサイクル性にも優れています。燃費向上、Co2削減に期待が持てる素材であり、鋼鉄の5分の1の軽さと5倍の強度という特性もあるため、自動車及び輸送分野、食品分野、日用雑貨分野など、生活におけるすべての分野で展開していけたらと思っております。また、現在開発を進めているのは、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)にセルロースファイバーを混合した自然に還る樹脂です。ポリ乳酸にセルロースファイバーを配合することにより、耐熱性などの向上が認められ、今後さらなる用途への展開に期待しています。
事業を通じ、どのような未来を作りたいとお考えでしょうか。
昨今の異常気象や自然災害は人間が有益を求めた結果だと思っています。人間が利便性を求めることは決して悪いことではありません。人間と自然がそれぞれに無理なく共存できる環境を作っていくことが必要だと思っています。プラスチックは私たちが生活する上でとても便利な素材で必要不可欠なものとなっています。しかしそれが自然界に悪影響をもたらすのであれば、減らす努力、リサイクルする努力が必要になってきます。プラスチックの利便性を失わずに、今ある環境を守る、後世に豊かな資源を残すためにも、バイオマスプラスチック(環境配慮型樹脂)の普及は必要不可欠です。GREEN CHIP CMFの普及活動とともに、さらなる環境に配慮した素材の開発を進め、人間も自然も無理なく、豊かな生活を送れる未来になるよう、努力してまいりたいと思います。
(インタビュー 2021年9月13日)