春日製紙工業株式会社のSDGs 2021年8月23日OA
春日製紙工業株式会社の紙ストロー
春日製紙工業株式会社 直需部 秋山英範さん
会社のプロフィールを教えてください。
富士市の比奈に、昭和5年創業し昨年90周年を迎えました。創業当初は総合的な紙製品全般を製造していましたが、現在は100%古紙再生紙のトイレットペーパーが主軸です。他には漫画誌の紙を製造しています。「地球とともに」というスローガンを掲げていて、環境に配慮した製品づくりをしています。
「環境に配慮した取り組み」を常に行っているそうですね。
工場の動力は最新のガスタービン設備で、工場の約75%を自家発電していてCO2の削減に貢献しています。また、紙製品を作るのは大量の水が必要になるのですが、使用した水は魚が住めるほどきれいな水にしてから排水しています。
その中で、持続可能な未来づくりに貢献する、最近の事業についてお聞かせください。
地球環境に配慮した製品づくりということで、特に最近叫ばれている海洋プラスチック問題への解決策の一つとして、使い捨てプラスチック製品の代替品となる紙製品を作ろうと考えました。現在、紙製のストローを製造しています。
SDGsの17の目標のうちの「どれ」に該当するとお考えでしょうか。
紙ストローをはじめとした紙製品の製造を通して、⑨「産業と技術革新の基盤を作ろう」 ⑪「住み続けられるまちづくり 」⑫「作る責任使う責任」 ⑭「海の豊かさを守ろう」 ⑰「パートナーシップを達成しよう」を主な目標としています。紙ストローの製造現場については、立ち上げ当初からメインとなる機械のオペレーターに女性を積極的に登用していまして、今後社内全体で⑤「ジェンダー平等」や⑧「働きがい」にも力を入れていこうと考えています。
「紙製のストロー」の製造にあたり、事業開始前に感じていた社会課題についてお聞かせください。
地球規模の環境問題で、「地球温暖化」と並ぶ勢いで「海洋マイクロプラスチック問題」が叫ばれるようになり、早急に対策が求められる課題となっています。我々製紙メーカーも脱プラスチック、プラスチック代替として紙の可能性を改めて追求していくという課題が与えられたと考えています。
事業をどのように進めてこられたのかお聞かせください。
特に海外ではプラスチックストローから紙製ストローへの切替が進んでいるなかで、私たちも2019年に紙ストローの開発に着手しました。もともとあった紙製品加工部門の技術やノウハウをもってしても約半年以上は試行錯誤を繰り返しまして、2019年の夏に、ようやく製品化できました。今もってなお更なる品質向上や、新たな仕様の開発を続けている状態です。今4世代目の、製品が市場に出ています。
春日製紙工業さんの「紙製のストロー」の特徴はどんな所ですか?
長年培った紙加工の技術とノウハウを活かして、日本国内で調達した部材を使用し、自社生産の純国産品として安全性と耐水・耐久性に優れた紙ストローです。
紙ストローで懸念されがちな「紙の味」や「紙の臭い」を限りなく軽減する加工を工夫しました。また、唇への触感、張り付いちゃうと言われていますが、そのような違和感をなくして、快適に使用頂ける仕様にしました。名入れ個包装も小ロットから可能、各方面でのニーズに対応します。紙ストローのみならず、協力会社との共同開発により紙製の容器・フタなどを企画・製造しています。また、見た目にもこだわったり、衛生面にもこだわったりしています。開発に時間がかかってしまって、この夏からの販売となっているんですが、曲がるストローも完成しました。
この事業の面白さ、やりがいについてお聞かせください。
一昨年から、各方面へ紙ストローをご紹介してご採用を頂いているんですが、この2年の間においても、海洋プラスチック問題への世間の意識がとても速い勢いで浸透して、また使い捨てプラスチック製品への考え方が変わってきている事を営業の最前線で実感しています。春日製紙工業の紙製ストローに共感してもらえているという実感もあります。
事業を推進するにあたり「解決したい課題」があればお聞かせください。
海外と比較して、日本の脱プラは遅れています。ストローについてはプラスチック製品と比べると、紙製品はコストがやや高めにはなってしまうのが現状です。ただ、コストはやや高めでも、それは地球環境を守るために必要なコストだという意識に変わっていってほしいとも思います。
事業を通じて、どのような未来を作りたいとお考えでしょうか。
日本では「プラスチック資源循環戦略」により、2030年までに使い捨てプラスチック製品を累積25%削減という目標を掲げています。紙ストローのお話をする中で、今は「プラスチック代替」と言っていますが、2030年にはストローは紙が当たり前となっていればと思いますし、そのためにも引き続き紙素材の可能性を追求していきたく思います。
(インタビュー 2021年8月23日)